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とさのくにばしら
土佐の国柱
山本 周五郎
「読物文庫」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页
遠くから姿こそ見たが、近寄って顔を合せるのも初めてだし、むろん言葉を交わすのも初めてである。小弥太の思い切った態度に遭って、小百合は僅に反抗しながらも、それ以上どうすることも出来ない圧迫を感じて、あとはただ噎びあげるだけだった。
「もう大丈夫ですよ」
小弥太が家へ伴れ戻ると、……広縁に母親の亀女が立っていた。
「どうしたのですか、小弥太」
「小百合どのが折檻されていたので、まあ預って来たのです。……小百合どの、母です」
「御挨拶はあとにして」
と亀女は振返って、
「おかよ洗足の水を取っておくれ。……あなた、どうぞ向うへお廻りなされませ。お父上には小弥太からお詫びをさせましょう。さあ、遠慮をなさらずにどうぞ」
「……お恥ずかしゅう存じます。お言葉に甘えまして、それでは……」
小百合はようやく泪を押えながら、洗足をとりに廻って行った。
「母上、眼を離さぬように願います」
小弥太は囁くように云った。
「ひどく思い詰めている様子ですから」
「いったいどうしたという訳です。……親しくせぬ高閑さまへ、勝手に生垣を越えて行ったり、お嬢さまを無理にお伴れ申したり、……おまえの仕方は、不作法ですよ」