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とち

土地

豊島 与志雄

「青年」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页

青空文庫

お前、一体町せえ行って何するつもりだ。」

「製糸工場で人を傭うだとよ。おら其処で暫く稼えで、金がたまったらじき戻って来るだ。」

平助は彼を上からじっと見下した。

「おたかがそんなことお前に云って寄来しただろう。」

音吉は顔を挙げたが、すぐに眼を外らして、遠い山の方を見やった。

「おたかじゃねえよ。」

「嘘云うねえ。おらにはちゃっと分ってるだ。おたかが工場に行く時から、お前は約束しただろう。……あいつ、まだお前を引張ろうというんだな。太え女っちょだ。あんな者にかかり合っちゃあ、お前のためになんねえぞ。」

「おら何もおたかをどうってんじゃねえが……。」

「馬鹿云うねえ。もう村の者あみんな知ってるだぞ。おら一人知らねえとでも思ってるんか。……なあお前、出来たこたあ仕方がねえが、町せえ行ったなあ仕合せだ、あんな図々しい女っちょなんざあ、これきりふっつり思い切ってしまうがええだ。他に立派な娘っ子が、村にいくらもいるだ。」

「おらおたかのことどうこうって云うんじゃねえよ。町せえ行って少し儲けて来てえばかりだ。」

「だがの、お前が行っちまったら、後はどうなるだ。男手はおら一人きりじゃねえか。