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とち
土地
豊島 与志雄
「青年」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页
よく考えてみろ。」
「じきに戻ってくるだ。うんと稼ぎためての、お前にも楽させるだ。」
「おら楽なんぞしたくねえ。天道様にすまねえだ。……お前も本当に身を入れて働えてみろ。この荒地はおいらが手で拓くだと思ってみろ。これくれえ立派な仕事はねえ。」
「どうあっても町せえやってくんねえのか。」
「昨晩云って聞かせた通りだ。まあ働けるだけ働くだ。そのうちにはな、おらがお前にええ嫁めっけてやるだ。辛棒しろよ。早まっちゃいけねえ。」
「おら嫁なんか貰わねえよ。」
平助はじっとその顔を見つめた。
「お前何だな……おたかから手紙を貰っただろう。」
音吉はただ頭を振った。
「隠してるな。……だがまあええや。うんと働えてみろ。働えてるうちには気が変ってくるだ。」
音吉はもう何とも云わなかった。やがて力なく立上って、ただ機械的に鶴嘴を振い初めた。
太陽が西の山の端に沈んで、遠くに入相の鐘が鳴り出すと、平助はすぐに仕事を切上げた。そして二人は荒地の側の小川で、鍬と鶴嘴とを洗った。それから泥のついた手足を洗い、最後に汗にまみれた顔を洗った。水の中には白い藻の花が咲いていた。
音吉はその藻の花にじっと見入った。