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トソンラン
土城廊
金 史良
「文芸首都」1940(昭和15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页
みんな斃るちゅうなんて、全くひでえ因果だよ。う、どだい、云うて何になるだ――」
爺は今にも泣きそうになる。
「ええ加減するだよ、ええ加減に。嘘こくでねえよ」と婦はほろ酔い機嫌であしらった。
「何だって」爺は煙管をふり捨てた。「何で嘘こくだ? う、姐さんは知りもしねえで。ふんとう、嘘でねえ、嘘でねえよ」
「おやおや」婦はさも呆れたように笑いこけた。「……爺や何時だったかは餓鬼あ二人でねえだったのけえ?」
元三はうーと悲鳴を上げて向きをかえ、てれ臭そうに大きな頓馬笑いを上げた。どこかで稲妻が青く光り雷鳴がごろごろと地を圧した。その拍子に彼は再び首をそっと廻して婦の顔を見ようとしたが、お互い目がかち合ったのでにたっと笑った。体に酒が廻ったせいかうずうずして胸が躍り、彼女も今日は殊更美しく見えるのだ。
外は益々ひどい嵐に煙っていた。田野を吹きまくって来る壮烈な風が土城廊に吼え立てる。幾千の土幕は水煙に深く埋れた。ポプラの木立がへし折れそうにたわわに揺れている。土城の上からは水が滝をなしてひた押しに流れ落ちて来た。
突然ことりと鼠が奥の箱の方へ飛び込んで行ったので、元三は大変だとばかりにひっくり返りざま箱を襲うた。