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もぐら

土竜

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,991 字 · 21 页

青空文庫

ほんで……」

梅三爺は遠慮勝ちな調子で言った。市平は、暫くの間黙っていたが、やがて、しんみりとした調子で言った。

「ほだら父、父も北海道さ行がねえが? 北海道さ行って、鉄道の踏切番でもすれば……! 踏切番はいいぞ、父!」

「鉄道の踏切番? 洋服着て、靴はいでがあ? 俺に出来んべかや?」

「なんだけな、あんなごと、誰にだって出来る。汽車来た時、旗出せばいいのだもの。」

「ほだって俺、洋服着たり、靴穿いだりして、お笑止ごったちゃ。」

「父は馬鹿なごどばり言って……」

市平は尚、踏切番という仕事が、年寄りに取って、いかにいい職業であるかを説いた。自分達親子で、官舎の一部を借りることが出来るから、そして二人で月給を取れば、どんなに裕福であるか知れないこと、被服などももらえるし、第一物価が廉いことなどを細々と話した。

「一体、開墾して、父、一日なんぼになっけな。」

「ほだなあ、汝いだ頃から見れば、坪あだり五厘ずつあがったがら、七十五銭ぐらいにはなんのさな。天気がよくて、唐鍬せえ持って出れば、十六七坪は拓すから。」

「十六七坪も拓すの、なかなか骨だべちゃ?」

「うむ。ここは、開墾賃もいい代わり、一鍬拓すでねえがらな。