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もぐら

土竜

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,991 字 · 21 页

青空文庫

「どうも私等には、巻き煙草では、強がすもな。」

「僕等は、どうも刻みは面倒で……」と、竜雄は別の一本へと吸いさしから火を移した。

「東京さは、今度は、いつ御上京でがす?」

梅三爺は突然思い出したように、さっきの吸いさしに火をつけながら、また唇を尖らして、とぎれとぎれに訊いた。

「東京なんか、もう、行く気になれんですね。」

「ははは……」と、梅三爺は笑いの中から煙を吐き出した。「やっぱり、田舎の方が宜がすかな?」

「僕も今度は、一つ百姓をして見ようと思ってね。僕も、開墾でもやりたいと思っているのだが……」

こう言って竜雄は、微笑んではいたが、彼の計画は真摯だった。

「あんだ等が百姓だなんて……百姓しねえたって、役場さ勤るが、学校さでも勤たら……」

「そのくらいなら……」と、竜雄は爺の言葉を遮った。「――いや、百姓が一番だ。僕は、百姓したいから、東京へなんか行くのを止めたんでね。でなけりゃ、まだ……」

「ほんでも、せっかく、今までやって、惜しがすぺちゃ。」

「僕なんか、最初っから間違っていたんですね。僕等は、百姓の子だから、百姓をやっていればよかったんですよ。まるで、もぐらもちが陽当に出て行ったようなもんで、いい世間のもの笑いですよ。