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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
各人の素質には賢さや愚さの相違はあろう。その相違は男を弄ぶか、男を楽しむか、男に弄ばれるか、男を嫌うかのちがった道をとらせはしても、心の根底には、意識を超絶した奥深いところではくみ尽すことの出来ぬ悲哀と憎悪が凝結しているのだ。その感情は個人が感じる小さな感情ではあるが、同時に全人類が感ずる悲痛である。唸きは思わぬところに吐き口を見出すものである。
「ほんとにじめ/\した人間ほど嫌なものはないわね」時子だ。
「あたし大嫌い、どことかの人のように物も碌に言わないでぐず/\しているのは」
「気どっているのさ」
お幸は菊龍に断定的な答を与えたつもりで煙管をはたいた。故意であり、また故意でなかった。莨の火が弾いて茂子の膝の辺りに飛んだ。白い煙がかすかに一条のぼった。茂子は黙ってその火をはたいた。膝のあたりに小豆粒程の茶色の焦げが出来た。
「あら、すみません、どうかなって――あら、焦げたのね、すみません」
「いいえ」
「茂子ちゃん、着物を着変えてこなくちゃいけないわ」
あまり流行らない茂子が着変えの夏物の座敷着をもっていないことを知っていながら時子は付け加えたのである。