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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
そのとき時限を報ずる鐘の音が響きわたった。校長は立ち上がった。校長の偶然な一言は平一郎の「逸話」を全部の教師達に知られてしまった。彼等の平一郎に対する理解は機嫌のいい時は「面白い」という程度の好感に止まっていても、何か平一郎に悪意をもつ場合には全然善良なる中学生としての彼の価値を否定する性質のものであった。十六の平一郎は自分の身辺に及ぼしている自分の力の反響にはまるで無知だった。奔騰する盲目の力は平一郎の内から絶えず表現の道を求めていた。
秋も深くなって来ていた。太陽の照り輝く日中でも音もなく吹く秋風は膚身にこたえて寒かった。夕暮、野に立ってひるごる曠野を望み見るとき、一面に黄色かった野面の稲はあとかたもなく刈り取られて、黒い土肌が陰鬱な日蔭に湿っているのみであった。加賀平野の押し迫った白山山脈の山裾の低いなだらかな山並が紫水晶のように透明な色調を、淡い甘美な夢のような美しい空の色に映していることもあった。あの恐ろしい自然の威力に猛る北国の冬の前の寂しい静かな秋風の吹く秋を人々は頼りない心で迎え送っていた十月、十月の第二土曜日には平一郎の学校の成績展覧会が極めて内輪に催される日であった。