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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
と看板がぶら下げてあった。主人の太兵衛は生まれつき体格が逞しく力があって、青年時代は草相撲の関取であったというが、そして女と酒と博奕と喧嘩のために少しあった資産もなくしてしまった三十の頃、今の主婦さんに惚れられて世帯をもったのだというが、しかし今はもう五十を越して早衰した老爺にすぎなかった。芸娼妓紹介の仕事も、もと芸妓であった主婦さん一人でやっていた。主婦さんがお光に、もし今の亭主が自分から惚れた男でなかったなら、そして亭主を捨てることが昔羨しがらせた朋輩やお客の手前がなかったなら、そして亭主の巨大であった筋肉を奪い、聴覚を犯し、眼を悪くした悪い病気に対して多少の責任を自分に感じないなら、とうの昔に捨てて新しい生活の道を選んだろうと言ったことがあった。実際お光よりは三つ四つ若い主婦さんにとって、昔強かった時分のつもりで一日中怒鳴りちらして暮らしている亭主は重荷であるらしかった。お光は偶然ではあるが、こうした家へ住居を定めたことを後悔することも度々であったが、またこうした家の二階を借りたことがお光の生活に、また平一郎の生活に、二人にとって実に重大な、運命の力を感じしめることになろうとは後にいたって思いあたることであった。