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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
と言った。
「小母さんも――」そして冬子は啜り泣きはじめてしまった。
冬子は今のさき、春風楼の女達に会って心づくしの土産物などを差し出したのだが、皆がまるで異邦人のように隔って碌な挨拶さえしてくれなかった悲しさに胸が一杯になっているところへ、お光の変わらない静かな愛情に泣けたのである。
「ほんとに、ほんとに、いつまでも変わらないのは小母さんだけでございます」
(ああ、お光の胸にこそあの昔の故郷がある。)冬子は昨夜、天野と一緒に古龍亭へ着いたこと、二日ばかりこちらにいる筈のこと、どんなにこちらへ来ることを楽しみにしていたか知れないこと、しかし春風楼へ来ても皆があまりに無愛想で悲しくなったこと、でも「小母さん」に会えて嬉しいこと、東京の生活も決して楽ではなく、始終気苦労が絶えないこと、などをこま/″\言葉少なに話していたが、突然にお光の顔を見つめて、
「小母さん」と呼びかけた。
「何んですの」お光は微笑した。
「小母さんは天野の旦那様の奥さまによく似ていらしってよ!」
「どうして?」とお光は穏かに言いかえしたが、眼を伏せた。
「わたしがはじめて今いる日本橋の家へ落着いてから間もなく天子様がおかくれになったでしょう。