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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

ただその一つ一つが小さく、内から湧く豊かな力がなく、全体が凋びているのである。疲労したような古びた皮膚の汚ならしさと老人のような色艶を見て平一郎は、(天野の子は早老している)と想わずにいられなかった。

「もう寝るのかい」と彼は平一郎に好奇心半分らしくたずねた。

「いいえ、まだ――」

「そう――父さん、蓄音機でもやりましょうか」と乙彦は嗄れた声で言ったが、天野は微かに両眼を開いたきり答えなかった。乙彦は大きな声で、「お雪、お雪、蓄音機を持っておいで!」と次の室の女中を呼んだ。その顔は両親の冷淡と無関心に傷つけられて、ゆがんでいた。お雪という顔中吹出ものの出た女中が蓄音機を持って来た。乙彦は針をつけながら「みんなこっちへ来て聴かないか」と言った。そのうちに蓄音機は滑稽な卑俗な、噴き出さずにいられないような「裏の畑に――」の唄を春の夜の一室で歌い出した。堪らないような肉的な哄笑が隣りの女中達からはじまった。綾子は仕方なしのように、「みんなこっちへおいで」と言った。さっきから来たくてむず/\していた女達は笑うことが茶の間へ来る資格かのようにげら/\笑いながら入って来た。