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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
菊龍と富江を見出して声をかけたのは時子だった。彼女は感じたことをことごとく言い現わしてしまわなければ承知できなかった。お幸もずるそうな微笑を含んで二人を見戍っていた。
「随分家の中は暑いのね」
時子はお幸の言葉に返事をしないで濡手拭を鏡台の鏡の上から裏へ拡げて富江に隣りあって坐った。そして石膏のように白い膚を脱いで暫く鏡面にうつる自分の映像に見とれていた。肉付は豊かだし、顔はほんのり血色がよいし、身体全体が石膏のように白く、ただそこに町方の娘に見出されるゆるやかに流れる鮮かな血潮の色あいと皮膚ににじみ出る青春の光沢がなかった。時子はそっと自分の小さい堅いぽっとふくらんだ乳を抑えてみた。乳房の表に繊細な静脈が青く透きとおって見える。指先に感じられる乳の感触は冷たかった。胸廓から腹部にかけての少しばかりの肉の緊張が彼女に若いことを保証していた。
「丹羽さんと吉っちゃんなの?」時子は鏡面から眼眸をはずして彼女には不似合な、そっとした優しみで二人を流し見た。十八の富江と菊龍は乱れた髪やはれぼったい眼縁などでひどく不縹緻に見えたにもかかわらず、その脈うちはちきれるような頬の赤らみと張りかたや、後髪へ伸ばした腕のむっちりした肉付がもつ新鮮な血のめぐり方やを時子は見逃さなかった。