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ちていせんしゃのかいじん

地底戦車の怪人

海野 十三

「ラヂオ子供の時間」(「地底戦車兵の冒険」のタイトルで。)1940(昭和15)年2月~

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,000 字 · 111 页

青空文庫

そのとき、林檎を手にとってみていたパイ軍曹は、

「おや、これはへんだよ。歯型がない!」

と、小首をかしげた。なぜ、こうして、いくつも、林檎が、ころころ転げだしてくるのだろうか。

林檎の始まり

「ピート一等兵。エンジンをとめろ。そしてこっちへ下りてこい」

と、パイ軍曹は、鼻の下に、鉛筆ですじをひいたような細いひげを、ぴくりとうごかして、さけんだ。

「さあ」

大男のピート一等兵は、地底戦車のエンジンをぴたりととめ、よっこらさと、座席から下りてきた。

「軍曹どの。もう、自分に対し、勲章でも、下さるのですか」

「ばかをいえ。もし、このままうまく地上にでられることがあったら、お前を銃殺するよう、上官に申請してやる」

「じょ、冗談を……」

「いや、ほんとだ。貴様は、じつに、けしからん奴だぞ。この地底戦車内において、指揮官たるおれの眼をごま化し、貴重なる食料品を無断で食べてしまうなどということが、許せると思うか」

「はあ、――」

ピート一等兵は、眼を白黒している。さては、パイ軍曹、自分が林檎をしっけいしたことを感づいたな。

「軍曹どの。自分は、幽霊の林檎なんか、たべないであります」