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じごくかいどう

地獄街道

海野 十三

「モダン日本」1933(昭和8)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页

青空文庫

話だった。なにしろどうにも手をつけかねるユダヤ結社のことだった。知る人ばかりは知っていて、其の不気味な底の知れない恐怖に戦慄をしていたわけだった。その「ユダヤ横丁」がすぐ塀の外になっているというので、これは辻永が顔色をかえるのも無理ではないことだと思った。

「これはことによると――」と辻永は云い澱んだ末「例の三人の青年はユダヤ結社のものにやっつけられたのじゃないかと思う」

「うむ。しかし屍体には短刀の跡もなかったじゃないか」と私はわかりきったことをわざと訊ねた。

「僕ならこう考える。青年たちはこの横丁をとおりかかって誤って団員と間違えられた。そのとき結社の内部を青年たちに見られたものだから、これを死刑にしたのだ。方法は簡単だ。散々撲って気絶させ、それからあの塀を越えてあの石炭の吊り籠に載せる。それだけでよいのだ。あとはあの殺人器械がドンドン片づけてくれる。ここのところを見給え。奴等の乗り越えてきたあとがあるぜ」

そういって辻永は、まだ塀の新しい裂け傷や、跳ねかかった泥跡を指した。

「青年たちはどうしてこの横丁へなぞ入ってきたのだろう」私は不審に思った。

「そいつはこれから探すのだ」