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かいとのはなし
垣内の話
柳田 国男
「民間伝承十二卷八・九號」1948(昭和23)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,985 字 · 14 页
五
古代史の闡明には必ずしも勇敢ならず、たいていの史学者の断定にいつも警戒している私たちではあるが、もし幸いにしてこの第二の推定が成り立つとすれば、ここでは偶然にも中央文化の、もう一つ以前の状態が窺い得られることになるのである。上手に問題を説明することが、できるかどうかははなはだ心もとないが、少なくともこれには興味あり、また記述しておくはりあいがある。そうして関敬吾君などのいう地誌的方法(メトード・カルトグラフィック)が、大いに活躍し得る余地もまたあるのである。
五
薩隅地方の中世文書を見ていると、あの地方には垣内という名目はほとんと見当らなくて、これに代るとおぼしき薗(ソノまたはソン)という言葉が盛んに出て来る。そうしてまた現在の地名にも多く残っている。居薗(イソノ)という語がしばしば用いられるのを見ると、居薗にあらざるものすなわち人の居住に供せられない園がもうできていたことは、中世近畿の垣内と同じかったらしいが、この点は少なくとも一つの進化である。人も知るごとく、初期の公地法では園と宅とは不可分であり、また二つのものは同じ待遇を受けていた。家屋の周辺に附属した苑地は用途も少なく、従ってまた面積もわずかなものだった。