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うもれたにほん
埋もれた日本
和辻 哲郎
――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,399 字 · 43 页
民間説話に題材を取ったらしい物語のなかで、最も目につくのは、伊予の三島明神の縁起物語『みしま』である。この明神はもと三島の郡の長者であった。四万の倉、五万人の侍、三千人の女房を持って、栄華をきわめていたが、不幸にして子がなかった。で、北の方のすすめにしたがって、長谷の観音に参籠し、子をさずけられるように祈った。三七日の夜半に観音は、子種のないことを宣したが、長者は観音に強請して、一切の財産を投げ出す代わりに子種を得るということになった。やがて北の方は美しい玉王を生んだが、その代わり長者の富はすべて消えて行った。長者は北の方とただ二人で赤貧の暮らしを始める。ある朝女房は、玉王を背負うて磯の若布を拾いに出たが、赤児を岩の上にでも落としてはという心配から、砂の上に玉王をおろして、ひとりで若布拾いにかかった。そのすきに鷲が舞いおりて、玉王をさらって飛び去った。母親は「四万の倉の宝に代へて儲けたる子を、何処へ取り行くぞや」と言って追いかけたが、鷲は四か国の境の山岳の方へ姿を消してしまった。長者夫妻は非常な嘆きに沈んで、鷲が飛んで行ったその深山の中へ、子をさがしに分け入った。