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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
」
「然し、」と此度は真面目な調子で中村は云った、「偶然だからまだいいんで、初めから殺意があったらなおいけないじゃありませんか。」
「私はその反対だと思うんです。意識的に殺されるのは構わないが、偶然殺されるなんて真平です。」
「では殺す方はどうでしょう。」
「殺す方だって同じです。偶然に人殺しをするような者は、永久に救われない奴です。けれど、意識して人を殺せるくらいな人間は、またどこか偉い所があると思うんです。私は友人からこういう話を聞いたことがあります。ゴリキーの書いたものにあるそうですが、ロシアの革命の頃、或る処の農民は、捕虜にした何十人かの敵の兵隊を、逆様に腿まで地中に埋めて、苦しさに足をぴんぴんやって死んでゆくのを眺めて、何奴が一番我慢強いとか、何奴が一番息が長いとか、そんなことを云い合って面白がったそうです。また或る処では、捕虜の腹から腸の一部を引出して、それを樹木の幹に釘付にし、皆で其奴を鞭で引叩き、其奴が木のまわりを送げ廻るにつれて、腸がずるずる出てくるのを見て、皆で面白がったそうです。而もそれが、敵の兵士とは云いながら、やはり同胞のロシア人なんです。