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へんじんでん
変人伝
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页
父は郷里の地所を処分すると言っていた。叔父はその辺を察してくれたのだった。僕は上京して、叔父の家から大学へ通い始めた。勤まるかと念を押された丈けのことがあった。
叔父は大きな家に住んでいたが、食事は朝晩近くの弁当屋から弁当を取って間に合せていた。昼は学校の弁当を食べるのだろう。婆やがいるけれど、通いだから、昼の間の留守番に過ぎない。朝来て晩方帰ってしまう。これも弁当を持って来るのらしい。弁当を常食としている家はあるものでない。僕は叔父が単に無頓着でこんな殺風景な生活をしているのだろうと思って、間もなく改良案を持ち出した。三度々々弁当では何うも落ちつかない。
「叔父さん、婆やに泊って貰って、賄をやらせちゃ何うですか?」
「何故?」
「弁当は不経済です」
「しかし面倒がなくて宜い。俺はもう二十年ばかり弁当を食べている」
「はゝあ」
「お前もその中に慣れるだろう」
「はあ。しかし夜分外出なさる時不便ですから、兎に角婆やに泊って貰っちゃ何うでしょう?」
「俺は夜分は絶対に外出しない」
「宴会や何かの場合です。僕の外出とカチ合うかも知れません」
「そんなところへは一切出ないことにしている。