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へんじんでん
変人伝
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页
「僕が勝ったら、僕の絵を貶しはじめたんです。学問がないから、描く草花がみんな死んでいると言うんです。然う/\、君のその石は死んでいるぞと言ったら、然う言い出したんです。普段悪口を考えて置いて、盤面の形勢次第で持ち出すんですから癪にさわります」
「そんな手廻しの好い人間なら寧ろ結構ですが、あれは植物学ばかりが学問だと思っているんですよ。世間知らずです。屹度その議論だったでしょう? 学校の方の喧嘩も」
「経緯を聞きましたよ。同僚が何か珍らしい花を持って来て、学名を訊いたんです。幸太郎君は直ぐに分らなかったものだから、『学問のない奴は物の訊き方が間違っている』と答えたんです。挑戦的だからいけません」
「愛嬌がないからね。同じことを言っても角が立つ」
と父も十分経験がある。
「相手はムッとしたんでしょう。『それなら何ういう風に訊けば宜いんだ?』『植物の鑑識を求める場合には花と実を揃えて持って来るものだ』『成程』『分ったら出直して来い』しかしこれは幸太郎君が無理でしょう。花と実が同時にある筈はありません」
「成程」
「相手もそこに気がついたから、『そんな非常識なことを言っても駄目だ』