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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

そういう寛斎は、本居、平田諸大人の歩いた道をたどって、早くも古代復帰の夢想を抱いた一人である。この夢想は、京都を中心に頭を持ち上げて来た勤王家の新しい運動に結びつくべき運命のものであった。彼の教えた弟子の三人が三人とも、勤王家の運動に心を寄せているのも、実は彼が播いた種だ。今度の大獄に連座した人たちはいずれもその渦中に立っていないものはない。その中には、六人の婦人さえまじっている。感じやすい半蔵らが郷里の方でどんな刺激を受けているかは、寛斎はそれを予想でありありと見ることができた。

その時になって見ると、旧い師匠と弟子との間にはすでによほどの隔たりがある。寛斎から見れば、半蔵らの学問はますます実行的な方向に動いて来ている。彼も自分の弟子を知らないではない。古代の日本人に見るような「雄心」を振るい起こすべき時がやって来た、さもなくて、この国創まって以来の一大危機とも言うべきこんな艱難な時を歩めるものではないという弟子の心持ちもわかる。

新たな外来の勢力、五か国も束になってやって来たヨーロッパの前に、はたしてこの国を解放したものかどうかのやかましい問題は、その時になってまだ日本国じゅうの頭痛の種になっていた。