轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

翌日の昼過ぎに、半蔵はこっそり正香を見に行った。御膳何人前、皿何人前と箱書きのしてある器物の並んだ土蔵の棚を背後にして、蓙を敷いた座蒲団の上に正香がさびしそうにすわっていた。前の晩に見た先輩の近づきがたい様子とも違って、多感で正直な感じのする一人の国学者をそこに見つけた。

その時、半蔵は腰につけて持って行った瓢箪を取り出した。木盃を正香の前に置いた。くたぶれて来た旅人をもてなすようにして、酒を勧めた。

「ほ。」と正香は目をまるくして、「君はめずらしいものをごちそうしてくれますね。」

「これは馬籠の酒です。伏見屋と桝田屋と、二軒で今造っています。一つ山家の酒を味わって見てください。」

「どうも瓢箪のように口の小さいものから出る酒は、音からして違いますね。コッ、コッ、コッ、コッ――か。長道中でもして来た時には、これが何よりですよ。」

まるで子供のようなよろこび方だ。この先輩が瓢箪から出る酒の音を口まねまでしてよろこぶところは、前の晩に拳を握り固め、五本の指を屈め、後ろから髻でもつかむようにして、木像の首を引き抜く手まねをして見せながら等持院での現場の話を半蔵に聞かせたその同じ豪傑とも見えなかった。