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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

お民の兄であるからと言うばかりでなく、同じ街道筋の庄屋仲間として互いに心配を分けあうのも寿平次だ。

「半蔵さん、わたしも一緒にそこまで行こう。」

と言いながら、寿平次は草履をつッかけたまま半蔵らの歩いて行くあとを追って来た。

旧暦四月はじめの旅するによい季節を迎えて、上り下りの諸講中が通行も多い。伊勢へ、金毘羅へ、または善光寺へとこころざす参詣者の団体だ。奥筋へと入り込んで来る中津川の商人も見える。荷物をつけて行く馬の新しい腹掛け、赤革の馬具から、首振るたびに動く麻の蠅はらいまでが、なんとなくこの街道に活気を添える時だ。

寿平次は半蔵らと一緒に歩きながら言った。

「御嶽行きとは、それでも御苦労さまだ。山はまだ雪で、登れますまいに。」

「えゝ、三合目までもむずかしい。王滝まで行って、あそこの里で二、三日参籠して来ますよ。」

「馬籠のお父さんはまだそんなですかい。君も心配ですね。そう言えば、半蔵さん、江戸の方の様子は君もお聞きでしたろう。」

「こんなことになるんじゃないかと思って、わたしは心配していました。」

「それさ。イギリスの軍艦が来て江戸は大騒ぎだそうですね。