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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

第二章

一

隣家の伏見家からは少年の鶴松も招かれて来て、半蔵の隣にすわった。おふきが炉で焼く御幣餅の香気はあたりに満ちあふれた。

「鶴さん、これが吾家の嫁ですよ。」

とおまんは隣家の子息にお民を引き合わせて、串差しにした御幣餅をその膳に載せてすすめた。こんがりと狐色に焼けた胡桃醤油のうまそうなやつは、新夫婦の膳にも上った。吉左衛門夫婦はこの質素な、しかし心のこもった山家料理で、半蔵やお民の前途を祝福した。

第二章

一

十曲峠の上にある新茶屋には出迎えのものが集まった。今度いよいよ京都本山の許しを得、僧智現の名も松雲と改めて、馬籠万福寺の跡を継ごうとする新住職がある。組頭笹屋の庄兵衛はじめ、五人組仲間、その他のものが新茶屋に集まったのは、この人の帰国を迎えるためであった。

山里へは旧暦二月末の雨の来るころで、年も安政元年と改まった。一同が待ち受けている和尚は、前の晩のうちに美濃手賀野村の松源寺までは帰って来ているはずで、村からはその朝早く五人組の一人を発たせ、人足も二人つけて松源寺まで迎えに出してある。そろそろあの人たちも帰って来ていいころだった。

「きょうは御苦労さま。