轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
鶴松も父金兵衛の名代という改まった顔つきだ。
「お師匠さま。」
「君も来たのかい。御覧、翁塚のよくなったこと。あれは君のお父さんの建てたんだよ。」
「わたしは覚えがない。」
半蔵が少年の鶴松を相手にこんな言葉をかわしていると、庄兵衛も思い出したように、
「そうだずら、鶴さまは覚えがあらっせまい。」
と言い添えた。
小雨は降ったりやんだりしていた。松雲和尚の一行はなかなか見えそうもないので、半蔵は鶴松を誘って、新茶屋の周囲を歩きに出た。路傍に小高く土を盛り上げ、榎を植えて、里程を示すたよりとした築山がある。駅路時代の一里塚だ。その辺は信濃と美濃の国境にあたる。西よりする木曾路の一番最初の入り口ででもある。
しばらく半蔵は峠の上にいて、学友の香蔵や景蔵の住む美濃の盆地の方に思いを馳せた。今さら関東関西の諸大名が一大合戦に運命を決したような関ヶ原の位置を引き合いに出すまでもなく、古くから東西両勢力の相接触する地点と見なされたのも隣の国である。学問に、宗教に、商業に、工芸に、いろいろなものがそこに発達したのに不思議はなかったかもしれない。すくなくもそこに修業時代を送って、そういう進んだ地方の空気の中に僧侶としてのたましいを鍛えて来た松雲が、半蔵にはうらやましかった。