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よなきてっこつ

夜泣き鉄骨

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,273 字 · 31 页

青空文庫

わしは、云うべき言葉もなかった。

「おせいさんは、覚悟の自殺を、やったらしいですよ。どうした訳か判りませんが」この工場の組長が、続いて口を挟んだ。

そこへ、ドヤドヤと皆を掻きわけて、前へ、飛び出した者があった。

「ああ、死んじまった。おせいさん、俺を残して、何故死んでしまったのだ」

気が変になったように喚いているのは、クレーン係の政だった。

「オイ、政。どこへ行くんだ」政に追い縋っているのは、雲的や源太だった。

「おお、おせいちゃん。おれも、直ぐ行くよォ――」

「おい、待てと云ったら」

政は、恐ろしい力を出して、源太を投げとばすと、呀ッという間に、熔融炉の梯子の上へ、ヒラリと飛び上った。

工場の人々は、まだ生々しい惨事のあとに続いて、どんなことが起ろうとしているかを、早くも悟って、戦慄の悲鳴をあげた。

「早く、あの男を捉えろ!」

「引ずり下ろせ、あいつは死ぬつもりだぞ!」

「誰か、助けてえ――」

わしは、身体を動かした。邪魔になる人を押しのけて、熔融炉の梯子の下まで来たときに、一足早く、雲的の奴が、梯子に手をかけていた。

「うぬッ」

わしは、雲的を、つきとばした。