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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
感応がある。ぴったり朝の六時。それでなければならない。彼はそうと、独り極めに極めてしまって、
「おお、これがおれの道楽かな。その子の出生は午前正六時、好い時刻だ。それに三月十五日、明治八年か。それで事はすっかり明白になった。いや、維新変革の後八年。ちょっと待てよ。それでは上宮太子御生誕後幾年になる。」
これには鶴見も途方にくれている。傍に一冊の年表でもあれば頼りになるのであるが、それもない。やっとのことで、大正十年が一千三百年の遠諱に当るということに気がついた。『日本書紀』は文庫本でこの頃手に入れたが、その本文から年代の纏った知識を得ることは容易でない。年表がやはり必要になってくる。幸に鴎外の集なら借覧を許されていた。その集の中に、ふだんは余り注意しない文章であるが、『聖徳太子頌徳文』というのがある。「皇国啓発の先覚、技芸外護の恩師」と冒頭に書き出してある、あの文章のことである。鴎外はこの祭文を太子一千三百年遠諱記念の式場において、美術院長の資格で読み上げたことになっている。大正十年四月十五日である。これは確な資料に違いない。鶴見はそれを手がかりとして、更に平氏撰と称されている『伝暦』