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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

磁気嵐

鶴見は黙っている。老刀自は裏山からかねて見つけておいた、すがれた秋草を取揃えて持って来て、李朝白磁の手頃なふっくりした花瓶に無造作に挿す。すすきの萎えた穂と唐糸草の実つきと、残りの赤い色を細かにつけた水引草と、それに刺なしひいらぎの白い花を極めてあっさりと低くあしらったものである。至極の出来である。

「何という対照であろう。おれは気に入ったよ。おれはたった今青木の絵を仲立ちにして、若いおりの情熱の世界をまざまざとながめていたのだよ。そんな時代もね、もうとっくの昔の夢となった。おれも老いこんだよ。明日はどうなるだろう。どうなっても、それを自然であらせたいね。こうやって活けた花をのどかに見ておれば老境もわるくはない。そうじゃあるまいか。」

鶴見は冗談だという風に見せかけて、そういって老刀自を顧みた。

二人は床の間を前にして、じっとして寂しく笑う。

磁気嵐

透谷の『蓬莱曲』が出た。鶴見の回想は今この本のイメエジをめぐって渦動をはじめるかに見える緩やかな曲線をえがいている。この『蓬莱曲』が出たという事実は、古い伝説が語るところの、江水の流れからあらわれた大きな亀が、その背に負うていたという、あの河図に比すべきものであったかも知れない。