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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
ニルアドミラリが分らぬといっても無理はない。
かれに取っては名利を釣るということもまた同様であった。言葉と文字とは分っていても、その実際に達するにはまだまだ遠かった。父親はかれのためには医学を望んでいた。そのことはかねて薄々聞かされてはいたのだが、痛切には感じなかった。そのかれにも欲求があったとすれば、それは自由に出来る仕事である。それは仕事とはいわれなかった。そこにはただ空想の動きがあったばかりである。
そうした空想に応ずる自由な雰囲気のなかで、かれは文芸と手を組むことをおぼえだした。そして勝手気儘な道をたどって行くようになった。正道を逸れることがあっても何とも思わない。埒があれば埒を踏み越えて行く。文芸との親しみは日ごとに深くなる。それが病みつきとなって、遂には切っても切れぬ仲となったのである。
縁といい約束といえば、いつも絆されているように想像されるが、その中には自由はある。法悦さえ感ずることがある。そんな予感が文芸に絆された少年の心に媚びる。未知の境界がこの少年を招き寄せる。迎えるものがあって迎えられるように思うのである。かれが気がついた時には、最早深入りしていた。