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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
しかも出ることは即ち入ることだ。無理に出るということは考えられない。
鶴見がこんな妄想に浸っている最中に、景彦の声がまた聞えてきた。今度は馬鹿に丁寧な言葉で物をいっている。
「相変らずですな。そういう説法も見事かは知りませんが、まあわたくしの手なみを見ていてください。あなたに好い夢を見せてあげますよ。」
「気まぐれものの景彦がまた何をしでかすかな。まあ、じっとして見ていてやろう」と独語のようにいって、鶴見は黙ってしまう。
景彦はそれきり音沙汰がない。しばらくして鶴見は退屈して、何気なく向うを見る。その時である。すべての光景が遽に一変した。
現実の刺戟はどこにも見られない。そこには深さもなければ広がりもない。ただうす蒼い雰囲気があたり一面を掩うているのである。
鶴見が壺中の天地なぞというのはこんなものかと思っているうちに、夢が青い空気のなかから搾りだされる。虚無の油である。それがまた蟄伏していたくちなわのうごめきを思わせる。気に感ずるような衝動を鶴見も感ぜずにはいられなかった。かれもまたわが身のうちに夢に応ずる夢のけはいを感じたからである。
鶴見は現われてくる夢を見つめた。