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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

動物には妄執がある。特に錯綜した妄念によって繋がれているのが人間である。人間はそこに罪深くも思想として迷妄世界を建立する。嗔恚と悔恨とが苛責の牙を噛む。

人間の霊はその迷妄世界をさまよって、形なきところに形を求める。その形象は妄執に相応する動物として示されねばならない。暗黒の中の光明、苦悩を蝉脱する献身も、やがてそこから生ぜねばならない。

鶴見の動物観は人間を輪廻の一環と見做している。人間の霊が永遠の女性に導かれて昇天するよりも、永遠の輪廻の途を輾転するのが順当だと思っているのである。迷妄の中で仏縁にあずかりたいのである。地上の夢の深刻さは味いつくし難いものがある。初はあろうが終はないものである。

鶴見はそんな事を考えていて肩荷を重くした。それを緩めようとして、思量を植物に転じた。石蒜のことから鴎外を引き合いに出した。そして放肆な考察はいつしか鴎外の文学の芸術性にまで及んだ。鶴見はいまさらのように、はてしない空想の飛躍におどろいている。しかしまたかれは自己の空想の放散を快く思っていぬのでもない。

植物のことが頭の中を一杯に占めている。植物にも動物の爪が生えているのではなかろうか。