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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
鶴見はここでふっと考えついた。戦争も下り坂になったころ、べにや板の需要が急にふえて来たと共に、その接著料が研究せられた。それには石蒜の球根がいちばん好いとなって、その採集に手を尽しているという事が、新聞紙で報道せられた。鶴見は今それを思い出したのである。
鼻垂れ地蔵の由来が航空機製造にまで応用せられるようになった。しかし考えて見ればそう不思議でもない。石蒜が人里近く繁殖しているということは、やがて石蒜に粘著料としての効用が認められていたからではあるまいか。何に使われたかは分らぬが、強いて言えば、紡織とか染付とかそういうような工業に一時利用せられたのかとも思われる。そうでなければその他に何か薬用があったものか。勿論これは鶴見が幾度もことわっているとおり、ただの思い附きに過ぎない。
とにもかくにも、その実用性を念頭に置くとき、石蒜が外来植物の一つであったろうかという想像に、その事の可能であるべき理由が附与せられる。
柳のことがある。ぎょりゅう(御柳)といって、今日では主としていけ花の方で珍重がられている。世間にそう多くはない木である。御柳を知っているのは大抵いけ花界の人たちということになる。