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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
それも立木のままで見たものはいくらもないであろう。
鶴見は静岡に長年住んでいたが、近所で一本見たきりである。ちょっといぶきのような趣きがあり、枝先は素直に垂れて、粉紅色の花をつける。あんな常磐木にこんな柔かい花が咲くかと思わせるような、奇異で、うるわしい花である。鶴見が見つけたというその木は板塀に囲まれた狭苦しい空地に、雑木と隣り合って、塀から上へ六尺位は高くなっていた。それが年に一度は必ず坊主にされる。花屋が切りに来るのである。鶴見はその度ごとに「おや、おや。またか。」そういって苦笑するのを禁じ得なかった。
渋江抽斎がこの木を愛していた。転居するおりには、いつでも掘り起して持って行き、そこに移しうえた。木はそれでも枯れずにいた事は、鴎外の抽斎伝に中に書いてある。何かの薬になるというので、抽斎の家にその木のあるのを知った人々が一枝を貰いに来る。ただそれだけのことが書いてある。別に考証はしていない。
※(「木+蟶のつくり」、第3水準1-86-19)は唐詩の中でしばしば見当る。※(「木+蟶のつくり」、第3水準1-86-19)が外来植物であるのは周知の事実である。