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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

」と、家の人たちはいっていました。

太郎は、おじいさんが、晩までには、帰ってくるといわれたから、きっと帰ってこられるだろうと堅く信じていました。それで、どんなものをおみやげに買ってきてくださるだろうと考えていました。

そのうちに、日が暮れかかりました。けれど、おじいさんは帰ってきませんでした。もうあちらの野原を歩いてきなさる時分だろうと思って、太郎は、戸口まで出て、そこにしばらく立って、遠くの方を見ていましたけれど、それらしい人影も見えませんでした。

「おじいさんは、どうなさったのだろう? きつねにでもつれられて、どこへかゆきなされたのではないかしらん?」

太郎は、いろいろと考えて、独りで、心配をしていました。

「きっと、天気が悪いから、途中で降られては困ると思って、今夜はお泊まりなさったにちがいない。」と、家の人たちは語り合って、あまり心配をいたしませんでした。

しかし太郎は、どうしても、おじいさんが、今晩泊まってこられるとは信じませんでした。

「きっと、おじいさんは、帰ってきなさる。それまで自分は起きて待っているのだ。」と、心にきめて、暗くなってしまってからも、その夜にかぎって、太郎は、床の中へ入って眠ろうとはせずに、いつまでも、ランプの下にすわって起きていたのでした。