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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

太郎は、小便に起きました。そして、戸を開けて外を見ますと、いつのまにか、空はよく晴れていました。月はなかったけれど、星影が降るように、きらきらと光っていました。太郎は、もしや、おじいさんが、この真夜中に雪道を迷って、あちらの広野をうろついていなさるのではなかろうかと心配しました。そして、わざわざ入り口のところまで出て、あちらを見たのであります。

いろいろの木立が、黙って、星晴れのした空の下に、黒く立っていました。そして、だれが点したものか、幾百本となく、ろうそくに火をつけて、あちらの真っ白な、さびしい野原の上に、一面に立ててあるのでした。

太郎は、きつねの嫁入りのはなしを聞いていました。いまあちらの野原で、その宴会が開かれているのでないかと思いました。もし、そうだったら、おじいさんは、きつねにだまされて、どこへかいってしまいなされたのだろうと思って、太郎は、熱心に、あちらこちらの野原の方を見やっていました。

ろうそくの火は、赤い、小さな烏帽子のように、いくつもいくつも点っていたけれど、風に吹かれて、べつに揺らぎもしませんでした。

太郎は、気味悪くなってきて、戸を閉めて内へ入ると、床の中にもぐり込んでしまいました。