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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

「これはなに?」と、太郎は、目を円くして問いました。

「これかい、これは海鳥だ。昨夜、おじいさんが、この鳥に乗って帰ってきなすったのだ。」と、お母さんはいわれました。

おじいさんが帰ってきなすったと聞いて、太郎は大喜びでありました。さっそく、おじいさんのへやへいってみますと、おじいさんは、にこにこと笑って、たばこをすっていられました。

それよりも、太郎は、どうして、海鳥が死んだのか、聞きたかったのです。その不審が心にありながら、それをいい出す前に、おじいさんの帰ってきなされたのがうれしくて、

「おじいさん、いつ帰ってきたの?」と問いました。

「昨夜、帰ってきたのだ。」と、おじいさんは、やはり笑いながら答えました。

「なぜ、僕を起こしてくれなかったのだい。」と、太郎は、不平に思って聞きました。

「おまえを起こしたけれど、起きなかったのだ。」と、おじいさんはいいました。

「うそだい。」と、太郎は、大きな声をたてた。

すると、同時に、夢はさめて、太郎は、床の中に寝ているのでした。

おじいさんは、お帰りなされたろうか? どうなされたろう? と、太郎は、目を開けておじいさんのへやの方を見ますと、まだ帰られないもののように、しんとしていました。