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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

銭を払おうといっても手を振って、その男はどうしても金を受け取らなかった。私は、大がにを背中にしょった。そして、みんなと別れて、一人で、あちらにぶらり、こちらにぶらり、千鳥足になって、広い野原を、星明かりで歩いてきたのだ。」と、おじいさんは話しました。

みんなは、不思議なことがあったものだと思いました。

「よく星明かりで、雪道がわかりましたね。」と、太郎のお父さんはいって、びっくりしていました。

「おじいさん、きっときつねにばかされたのでしょう。野原の中に、いくつもろうそくがついていなかったかい?」と、太郎は、おじいさんに向かっていいました。

「ろうそく? そんなものは知らないが、思ったより明るかった。」と、おじいさんは、にこにこ笑って、たばこをすっていられました。

「もらったかにというのは、どんなかにでしょう。」と、お母さんはいって、あちらから、おじいさんのしょってきたかにを、家のもののいる前に持ってこられました。

見ると、それは、びっくりするほどの、大きい、真っ赤な海がにでありました。

「夜だから、いま食べないで、明日食べましょう。」と、お母さんはいわれました。