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おおきなばけもの
大きな怪物
平井 金三
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,506 字 · 3 页
五官では到底正確に事物を知ることが出来るものではないのである。ただ茲に不思議なのは心である、五官の力を借りないでこの心で事物を知る能力が人間に備っている。即ち種々ある手段によって三摩地の境涯に入れば自ら五官の力を借りずに事物を正しく知ることが出来る、古来聖人君子の説かれた教は皆この五官の迷を捨てよと云う事に他ならないのである。
世の中には怪物が沢山居る、学問が進んで怪物の数が少くなったと云うがそれはいい加減なことで却って殖えたかも知れない、我国にも有形無形の怪物が彼方にも此方にもゴロリゴロリ転って世の中はまるで百鬼夜行の姿である。
私は百物語で幽霊があるとか、狐や狸は化るものであるとか、世の中に種々ある怪物の詮索をするのを止めて先ず我々人間が一番大きな怪物で神変不思議な能力を持っていると喝破し、多くの人々にどうか悪い怪物にならないで五官の迷を捨て修養の道に工夫を凝らし三摩地の境に入っていい怪物におなりなさいと勧め、これで一向怖く無い怪物談を切上げる事にする。