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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

で安政年間には有名な水戸の天狗党が、諏訪の地を蹂躪した。又文久年間には、高倉三位と宣る公卿が、贋勅使として入り込んで来た。勝海舟の門人たる相良惣蔵が浪士を率い、下諏訪の地に陣取って乱暴したのもこの頃であった。

それで、この事件の起こった時でも、勤王派の浪士達が、様々の者に姿を窶し、城下の諸方に入り込んでいたが、これが小屋者の味方となって、役人方に斬り込んだ。

それに城下の町人達の中にも、味方する者が出来てきて、石礫を投げ出した。

事態重大と見て取って、城下からは兵が出た。

内乱と云えばそうも云え、市街戦と云えばそうも云える。思いも由らない大事件が、計らず勃発したのであった。

城兵かそれとも浪士達か、鉄砲を打ち出したものがあった。

と、火事が飛火した。女の悲鳴、子供の泣声、避難する人々の喚き声が、山に湖面に反響した。

この時一人の若者が、逃げ惑う人々を押し退けて、小屋の方へ走って行った。

他でもない伊太郎で、恋人の安否を気遣って、家を抜け出して来たのであった。

小屋は大半焼け落ちていて、焔の柱、煙の渦巻……その中で戦いが行なわれていた。

役人の一人を殺し、血だらけの竹槍を振りかざしながら、荒れ廻っていた小屋掛があったが、伊太郎の姿に眼を付けると、