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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

堂の横手芸人の背後に巨大な公孫樹が立っていたが、まだ新芽は出ていなかった。鼬の大きさは四尺もあろうか、それが後足で立ち上り、前足をブラブラ宙に泳がせ、その茶色の体の毛を春陽にキラキラ輝かせながら、唄声に連れて踊る態は、可愛くもあれば物凄くもあった。

投銭放銭がひとしきり降り、やがて芸当が一段落となった。その時目立って美しい娘が供の女中を一人連れ仲見世の方からやって来たが、大道芸人の顔を見るとにわかに足を急がせた。その様子が変だったので、大道芸人は眼をそばめた。

「おや? 可笑しいぞ、彼奴そっくりだぞ?」

こう口の中で呟いたかと思うと、彼の側に蹲居んでいた二十四五の若者へ、顎でしゃくって合図をした。

「オイ源公、今のを見たか?」

「うん」と云うと若者は、その殺気立った燃えるような眼で、人混の中へ消え去ろうとする娘の姿を見送ったが、「異いねえよ、あの阿魔だよ」

「だが様子が変わり過ぎるな」

「ナーニ彼奴だ、彼奴に相違ねえ」

「そうさ、俺もそう思う」

「畜生、顔を反けやがった」

「オイ源公、後をつけて見な」

「云うにゃ及ぶだ。見遁せるものか」

で、源公は人波を分け、娘の後を追って行った。