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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「莫迦をお云いな。逢いに行くわよ」

「それに親方も源公もいずれ江戸の地にはいるんだからな、あんまり暢気に出歩いていて目付けられると五月蠅ぜ。何しろ源公ときたひにゃア、未だにお前に夢中なんだからな」

「源公なんかにゃ驚かないよ」お錦はむしろ冷笑した。「それこそ一睨みで縮ませて見せるよ」

「そりゃあマアそうに異えねえが……」

トン公はやはり心配そうであった。

7

二三日経った或日のこと、浅草観音の堂の側に、目新しい芸人が現われた。莚を敷いたその上で大きな鼬を躍らせるのであったが、それがいかにも上手なので、参詣の人の注意をひいた。

芸人の年輩は不明であったが、四十歳から六十歳迄の間で、左の耳の根元の辺りに瘤のあるのが特色であった、陽にやけた皮膚筋張った手足、一癖あり気の鋭い眼つき、気味の悪い男であった。

「さあさあ太夫さん踊ったり踊ったり」

手に持っていた竹の鞭で、窃と鼬に障わりながら、錆のある美音で唄い出した。

※(歌記号、1-3-28)甲州出るときア涙が出たが

今じゃ甲州の風も厭

春陽が明々と地を照らしその地上では鳩の群が餌をあさりながら啼いていた。吉野桜が散ってきた。