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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

琵琶師風の一人がやがて云った。

「姿はさまざまにしては居れど、浪士方と存ぜられます」

「いかにも左様、浪士でござる。……何の為の会合とおぼしめすな?」

「それはトント存じませんな」

「この図面、ご存知かな?」

琵琶師は図面を指差した。

「千代田の城の図面でござろう」

すると浪士は頷いたが、

「実は我ら千代田城へ、火を掛けようと存じましてな。それで会合をして居るのでござる」

家常茶飯事でも話すように、こう浪士はスラスラと云った。そうしてじっと眼を据えて、義哉の顔を見守った。

17

主君も主君将軍家の城を、焼打ちにしようというのであるから、これが普通の幕臣なら、カッと逆上るに違いない。

勿論義哉もカッとなった。しかし義哉は芸人であって、忍耐性に富んでいた。それで、別に顔色をかえず、冷やかに相手を見返した。

「小堀氏、何と思われるな?」

琵琶師風の浪士は嘲笑うように「さぞ憤慨に堪えられますまいな」

「破壊、放火、殺人というような殺伐なことは大嫌いでござる。こういう意味から云う時は、勿論貴所方の計画を、快く思うことは出来ませんな」義哉は憚らず思う所を云った。

「将軍に対する反逆については?」