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だいのうしゅじゅつ

大脳手術

海野 十三

「富士」1945(昭和20)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,185 字 · 31 页

青空文庫

いわば珠子さんは、雑誌の口絵にある印刷した美人画みたいなものだぜ。そういうものに熱中する君は、よほどの阿呆だ」

「……」

これは痛い言葉だった。私は終日不愉快であった。鳴海の奴は、私の熱愛していた偶像を滅茶滅茶に壊してしまったのだ。私はそれ以来一層不機嫌に駆りたてられた。こうなれば珠子に対する愛着は冷却せざるを得ないが、その代り珠子が私の脚を仇し男に贈ったという所業に対する怨恨は更に強く燃え上らないわけに行かなかった。

「よし、こうなればたとえ骸骨となっても、彼の仇し男を引捕えてやらねば……」

その頃丁度或る筋から、珠子とその仇し男らしき人物とが、K坂の夜店に肩を並べて歩いていたという話を聞込んだので、私は新しい探求手段を考えついて早速実行することにした。それは私もK坂の夜店に加わって、手相卜いの店を張ろうというのだった。そして腰をどっしりと落付けて、かの両人の見張を行おうとするのだった。

私はこの夜店の委員会の認可を受けた上で、黒の中折帽子に同じく黒い長マントを引摺るように着て、凩の吹く坂道の、小便横町の小暗き角に、お定まりの古風な提灯を持って立商売を始めた。