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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
おいおい進むと、その人相年齢すらも確とは判然しない。それと違って、畳針と、焼酎と、麻の糸とで縫い上げた療治ぶりは、手に取るように細かい。これは仏頂寺、丸山からは聞かなかったところ。
ともかく、想像すれば、ここを行くこと僅かにしていのじヶ原がある。そこの真中で四人の剛の者が、一人の弱々しい者を取囲んで、血の雨を降らしたという光景は、眼前に浮んで来る。そうして、四人のうち、二人は瀕死の重傷を負うてここへ担ぎ込まれたことは疑うべくもない。
してみれば、これからその途中、誰か一人ぐらいはその斬合いを見届けた者があるだろう。尋ねてみよう。
そこで、兵馬が、茶代をおいて立ち上る途端に、アッと面の色を変えたのは茶屋の番頭で、それは、今しも峠を上りきって、この店頭へ現われたのが、見覚えのある仏頂寺弥助と、丸山勇仙の二人であったからです。
五条源治の番頭が青くなったのも無理はありません。こういうお客は、二度と店へ来ない方がよいのです。あの時は、亡者が立去ったほどに喜び、塩を撒いてその退却を禁呪ったのに、またしても舞戻って来られたかと思うと、物凄いばかりであります。