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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

「友様、どうした」

「うーん」

と米友が杖槍から荷物まで、そっくりそこへ抛り出し、足を投げ出して、上目遣いに、道庵の面を眺めただけで無言。

米友のグロテスクな面に、浅間の雲と同じような憂鬱が三筋たなびいている。

道庵はそこで杖を立てて、信濃の山川を顧みていると、

「先生」

暫くあって、米友が重苦しく道庵を呼ぶ。

「何だい」

「人が死んでも、ほんとうに魂というものが残るのか」

「そりゃ、そうだとも」

「で、その魂はどこへ行ってるんだ」

「うむ、そりゃあ……」

道庵はグッと唾を呑み込んで、

「そりゃあお前、地獄へも行けば、極楽へも行かあな」

「地獄と極楽のほかに、この世へ戻って来ることはねえのか」

「そりゃ、この世へ戻って来ることもある、魂魄この土にとどまって、恨みを晴らさないでおくべきか……」

道庵は瓢箪をあやなして、変な見得をきってみましたが、米友はその追究を緩めないで、

「その魂がこの世へ戻って来ると、どこにいる」

「うむ、そりゃあ……そりゃこの宙に彷徨っていてな、好きな奴へは乗りうつり、恨みのある奴には取ッつく」

「うん、それで、その魂は、どんな色をしている」

「色――魂の色かい」