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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
そうしているうちに、白雲が膝を打って、
「これだ」
と言いました――白雲もまた、最初からこの般若の面が凡作ではないと見ていたのですが、この時になってはたと思い当りました。
これこそ与えられた絶好な画題だ。その不思議な踊り全体のリズムが、人を妙に陶酔の境へ持って行くのみならず、仔細に見ると無心な子供が、大人の長い着物を引きずっているところにまた無限の趣味がある。そうして、鈴と、御幣とを、無雑作に小さな両の手で振り翳したところに、なんともいえないたくまざるの妙味がある。
もしそれ、その冠った般若の面に至っては、白雲が日頃から問題にしていた名作で、銘こそないがその作物の非凡なる、どこからどうしてこの少年が手に入れたのか。そうして朝から晩まで、食事の時でも膝をはなさないで大切がっているのが訝しいほどである。白雲は、いつか、その面を取ってつくづくと、作と年代等を研究してみようと思っていたそれでありました。いま見ると、その名作の面影がつくづくと人に迫るものがある。
体のすべてが無我無心に出来ているのに、面そのものだけが、呪いと、憎悪とを集めた、稀代の名作になっている。