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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

貴殿御同意なきに於ては是非に及ばぬ儀でござる故に、急ぎ関東へ参陣あらせられるがよろしい」

三成は存外、失望することなく、右の如く吉隆に応答した。

それを聞き深めていた吉隆は、沈痛な返事をもってこれに答えた、

「意見の相違、是非に及ばぬことだ、然らば貴殿は貴殿の計画に任じ、思うように計り給え、拙者は拙者として、このまま会津征伐に馳せ加わるのみじゃ」

「全く以て、是非に及ばぬこと」

ここで舞台が暗くなると共に、幕が落ちた。

お銀様は関ヶ原軍記を前にして、自分が見ようとする芝居の筋書を、こんなふうに胸に描いているのでありました。

二十

やがて幕が下りたのではなく、やはり暗転の形で次の舞台が現われたのであります。

それは前の大谷刑部少輔吉隆が手勢を引きつれて出て来たには相違ないが、この時の装いは全く違っている。練の二ツ小袖の上に、白絹に墨絵で蝶をかいた鎧直垂は着ているけれども、甲冑はつけていない、薄青い絹で例の法体の頭から面をつつんでいる。そうして、四方取放しの竹轎を四人の者に舁がせて、悠然としてそれに打乗っている。前の場の石田との会見から垂井へ戻るにしては、胆吹山の方角が違っている。