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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
38 農奴の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,484 字 · 60 页
米友は、それを黙って聞き流しました。あえて一言のタンカを切るでもなく、むじつを訴えるでもない。明日は、この穴の中へ、自分の素首が斬り落されて、文字通り身首ところを異にする運命をまざまざと見せつけられながら、米友は何も言わない。
非人が二人で、三尺立方の穴を、ほとんど掘り上げてしまった時分に、通りに林立している見物の群集の中に、
「あっ!」
と思わず口へ手を当てて、面の色を変えてこの「晒し」を見直したものがありました。
六
この男はキリリとした旅慣れたいでたちで、三度笠をいただいていたが、人混みにまぎれて物好き半分、この「晒し者」を一見すると卒倒するばかりに気色ばんだが、やや落着いて、
「どうしたというんです、ありゃあ」
そっと、ささやくように、傍らの人に問いかけたものです。
「ちょうさん者ですよ」
「ちょうさんてのは……」
「つまり、百姓一揆でござんすな」
「あれがですか、あの男が百姓一揆なんですかね」
「へえ、あれ一人が百姓一揆というわけじゃあございませんな――やっぱり一味ととうの一人なんでしてな」
「あれが……」
「左様でござんす、一味ととうのうちでも、ちょうさんを企てた最も罪の重い奴ですから、それであの通り、『晒し』