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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

「あい」

「おばさんがおもしろい話と思っても、人が聞いては面白くないこともありますよ」

「そりゃありますがね、今おばさんがして上げようという話は、この仙台の人でなければ知らない話ですから、よそからおいでた方が聞けば面白いにきまっていますよ」

「仙台の昔話が、そんなに面白いかえ」

「ええ、面白いですとも」

「話してみて頂戴、あたいは、面白くないと思えば決して辛抱して聞かないから」

「こちらへいらっしゃい、話して上げますから」

こうして老女は、茂太郎を自分に近いところへ呼び寄せて坐らせ、それから奥州の昔話をはじめました。

「むかしむかし、ざっと昔」

「むかしむかし、ざっと昔」

「あるところで婆が座敷を掃いていたら、豆が一粒落ちていた。婆が拾うべとしたら、豆はコロコロと転がって行った。婆が拾うべと思って追いかけて行ったら、どこまでも転がって行くので、婆は『豆どん豆どん、どこまでござる』と言って道端の地蔵さんのお堂の中で見失ってしまいました」

豆どん豆どん、どこまでござる

豆どん豆どん、どこまでござる

茂太郎は声高く歌い出しますと、それを抑えて老女は語りつぎました。

「そこで婆は地蔵さんに、『地蔵さん地蔵さん、豆が転がって来えんか』