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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

やれやれ、これでまあ、こっちも助かった、船頭親子も怪我がない限り、おっつけ舟も廻って来るだろう、と旅人どもは、市が栄えたような心持で、げんなりしたが、白雲ひとりだけの興味は、決してそれで尽きたのではありません。更に一層の興味をこめて遠眼鏡の筒を、逃げて行くウスノロ氏の後ろへ向けました。

こけつまろびつ走りつづけたウスノロが、ほどなく蘆荻の生いしげったようなところへ来ると、その蔭からパッと飛び出して、いきなり抱きつくようにウスノロ氏を迎えたものがあります。

「あれだ!」

白雲は、その者が兵部の娘もゆる嬢であることを直ちに認めました。

「ははあ、あいつら、こんなところに巣をくっていたのか、本来、ふやけた奴等ではあるが、それにしても水びたりになって隠れているのにも及ぶまいに、どこまでも変っている、どうするか見遁すことではないぞ」

と、見ているうちに、二つの影は相擁して、その蘆荻の中へ没入してしまいました。

「ちぇッ、やっぱりあの水の中の蘆荻の蔭で二人がうじゃじゃけている、しようももようもない奴等だ」

白雲は、二人の没入した蘆荻の中を、苦笑いしながらなお眼鏡を外さないで見ていると、やがてその間から、すうっと一隻の小舟が漕ぎ出されたのを見て、