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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
「そうです、政宗はなかなか食えない男です、邪法国を迷わすなんぞと、詩にまでうたっていながら、その事実、宣教師を保護し、切支丹を信じていたのですな。信じていないまでも、決してローマの法王なる者に悪意は持っていなかったのです。或いは切支丹を食いものにしようとした男かも知れません」
「そうでしょうとも。風向きによっては、秀吉や家康をさえ食い兼ねない男でしたから、切支丹を食うぐらいは朝飯前でしょう」
「それは少し比較が違う、秀吉や家康は、或いは食いものになるかも知れないが、切支丹は全然食いものにならん。これを迫害しないで、利用しようとした点に、政宗の頭脳のよさを認められない限りもない。あの時代、秀吉を除いて、本当に海外に志のあった豪傑は、まず政宗でしょうかな――近世の奇物、林子平なんというのも、たしかに政宗の系統を引いている。他の土地からは出ない人物だ」
というような人物論からはじまって、白雲もまた、古永徳に惹かされて、こちらを志した行程から、仙台城下の所見を語り出し、結局――このはからざる奇遇を喜ぶと共に、この奇遇の結びの神たる七兵衛の身の上に、話が落ちて行かないはずはありません。